目なおし(目明し)地蔵

 昔々、赤坂の中ほどに、小さな石のお堂があり、その中にお地蔵様がおられました。

 ある年の桃の実がなるころ、ある男が、桃を食べたいと思いましたが、あいにく持ち合わせのお金がありませんでした。そこで、誰も見ていないのをよいことに、このお地蔵様のお賽銭を盗み、桃を買って食べました。

 ところが、不思議なことに、だんだんと目が悪くなり、とうとう何も見えなくなってしまいました。これは困ったことになったと思い、友達に相談したところ、

「お賽銭を盗んだばちがあたったのだ。」

と言われ、盗んだお金を返すようにすすめられました。

「悪いことをした。」

と深く反省した男は、お賽銭を返し、一心にお地蔵様にお詫びをしました。すると、だんだん目が治り、再び見えるようになりました。

 この話を聞いた村の人々は、いつしかこの地蔵様を「目なおし地蔵」と、よぶようになりました。

 この地蔵様には、また、次のような目なおしの話が伝えられています。

 このお地蔵様の近くに心の優しい娘が住んでいました。いつもお地蔵様のお世話をしていました。その娘は大きくなって隣村にお嫁に行きました。ところが、その娘は嫁入り先にいると決まって目が悪くなり、赤坂の実家に帰ってくると、不思議に目がよくなりました。

 こんなことがなんども繰り返されたので、はじめは、娘も親も不思議に思いましたが、そのうちに、これは、目なおし地蔵様のおかげかもしれないと思うようになりました。それに気がついた娘は今まで以上に熱心にお参りするようになり、目がすっかりよくなりました。大変よろこんだ娘と親は、村人と相談して、赤坂の村はずれの良い土地に、立派なお堂を建て直しました。そして、村人たちは、今までよりも一層熱心にお地蔵様にお参りするようになったということです。

(出典:今立むかしむかし)